鹿児島県を地盤とする食品スーパーのタイヨーとセブン&アイ・ホールディングスが「資本業務提携?」・・・・。そんな憶測が一時期,業界で流れた。
タイヨーを巡りこうしたウワサが出る背景には,同社が昨年7月、三井住友銀行から融資を受けてのMBO(経営陣による株式買収で大証二部及び福証の上場を廃止したことにある。
タイヨーのホームページの記載によると,同社がMBOに踏み切ったのは,「長年の不採算店を閉鎖、既存店の強化を図り、経営者主導により減収増益の経営モデルを作り出すことにある」としている。
経営陣の思惑通り,同社は甦るのか。タイヨーの先行き,さらには九州のスーパー業界の先行きを見通すうえで,流通情報誌「激流」の記事は参考となる。同誌は,毎年8月号で全国の主要食品スーパーの経営考課表を掲載している。
このブログでは,2011年8月号,2013年8月号,そして今年8月号の記事を転載する。
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◎2011年 売上高 1253億2800万円(伸び率 0.4%)
経常利益 22億2100万円(伸び率 8.9%)
・寸評:精肉と青果の好調で業績は好転。昨年12月に姶良店を改装した新業態店舗グラードは苦戦。ネットスーパーは9月に2号店を出店。今後の投資次第では大化けの可能性も。MD協議会も進み出したが,商品部のレベルアップにはまだ時間がかかる。競合対策も課題。
◎2013年 売上高 1285億5470万円(伸び率 ▲ 1.8%)
経常利益 21億8000万円(伸び率 ▲23.6%)
・特記事項:九州のスーパーマーケットで売上高で昨年までタイヨーは,1位サンリブ(福岡)に次ぎ2位であったが,2013年売上高で1342億8800万円のマックスバリュ九州に抜かれ業界3位と後退した。
・寸評:大手コンビニとドラッグの攻勢を受け大苦戦。ID−POSの導入によるMDの高度化に取り組むが、いまだに効果は出ず。今期は第二次中期経営計画や最終年度として総菜事業の製販一体体制の構築とネットスーパー事業の拡大で差別化を図るが,厳しい状況が続きそう。
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◎2014年
・特記事項:MBOで株式を非公開化し,大証二部及び福証の上場を廃止した。競争が厳しさを増すなか、非公開化による機動的な経営体制の構築と改装などを通して既存店の収益力改善,管理コストの削減を目指す。
・寸評:昨年秋にMBOを実施して上場を廃止。組織改革を実施し,迅速な判断と行動の実践で利益重視型へと経営スタイルを変更したが道半ば。MDの高度化を目指して導入したID−POSも有効活用できぬまま8月をもって開示終了を決定。経営の抜本的改革がなければ浮上は難しい。
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▼ 8月号 もくじ
新スーパーマーケット像を模索 ■食品スーパー21社の経営戦略・アークス(北海道・札幌市)
・コープさっぽろ(北海道・札幌市)
・マックスバリュ北海道(北海道・札幌市)
・ヤマザワ(山形県・山形市)
・ヤオコー(埼玉県・川越市)
・サミット(東京都・杉並区)
・三越伊勢丹フードサービス(東京都・中央区)
・オギノ(山梨県・甲府市)
・いちやまマート(山梨県・中央市)
・アクシアルリテイリング(新潟県・長岡市)
・バロー(岐阜県・多治見市)
・ヤマナカ(愛知県・名古屋市)
・オークワ(和歌山県・和歌山市)
・阪食(大阪府・豊中市)
・ハローズ(岡山県・都窪郡早島町)
・エブリイ(広島県・福山市)
・マルナカ(香川県・高松市)
・マックスバリュ九州(福岡県・福岡市)
・マルキョウ(福岡県・大野城市)
・ハローデイ(福岡県・北九州市)
・サンエー(沖縄県・宜野湾市)
◎主要チェーン110社の経営考課表
◎INTERVIEW この人に聞く
■牛乳石鹸共進社 宮崎 悌二 代表取締役社長
・思いやりの輪を広げ仕事のやり方を変えていく
◎特別レポート
・流通業界の競争環境を一変させた一杯のコーヒー
◎中国レポート
・景気減速の長期化で消費低迷に喘ぐ中国小売業の苦境
◎次世代型販促
■JR東日本ウォータービジネス(ビッグデータ活用)
・個店対応に行き着いた自販機のイノベーション
◎企業戦略
■楽 天
・リアルな体験で認知を広げるネットの価値とサービス
◎バイヤーズ・アイ
セブンイレブン・ジャパン 商品本部 飲料・酒・加工食品担当マーチャンダイザー 片岡 孝寛
「酒 類」● 付加価値訴求と関連販売の提案力を強め、来店客数増を図る
◎話題店舗訪問
タウン・ドイト 東向島店(小規模型ホームセンター)
・ハードをソフトに変え、都市住宅地に密着する便利店
◎ドラッグストア最前線レポート
マツモトキヨシHD
・地域に根差す戦略を奨学金制度にも導入
◎アジアを拓く
二〇〇兆円のハラルマーケット入門 最終回
・現地展示会が示唆するムスリム攻略のマーケティング
◎どうなった?話題店舗のその後
東京ソラマチ(スカイツリータウン)
・開業集客効果一巡で見えてきたアクセスと運営の不備
◎米国小売流通業最前線レポート
Part1……ダークチョコレートが象徴する大人の菓子市場の拡大
Part2……ドライブスルーはコンビニエンスストアで定着するか
◎商品戦略
資生堂
・「アネッサ」最強の日やけ止めに加えた美肌効果と快適な使用感
◎企業戦略
丸和運輸機関
・消費者までのワンストップサービスの提供で小売業の収益拡大に貢献
>>>タイヨー:MBO,1393万株を取得 親会社は清和薩摩
鹿児島県を地盤とする食品スーパーのタイヨー(鹿児島市)は10月12日、株式の非公開を目指した経営陣による自社買収(MBO)の結果、応募があった 1393万株を10月19日に取得すると発表した。今後はタイヨー社長の清川和彦氏が社長を務める「清和薩摩」(同市)がタイヨーの親会社となり、東京証 券取引所第2部と福岡証券取引所は上場廃止となる予定。
清川氏の資産管理会社「清和産興」(鹿児島市)が8月1日〜9月11日、タイヨーと清和産興の所有株式を除く発行済み全株1417万株の公開買い付け(TOB)を実施していた。清和産興は1株1100円で取得し、買付総額は約123億円。
⇒⇒ 告知 ⇒ 清和産興株式会社による当社普通株式に対する公開買付けの結果並びに 親会社及びその他の関係会社の異動に関するお知らせ http://www.everybirdie.net/ir/9949/350497/
▼タイヨ-の連結業績
◆タイヨー
鹿児島地盤の食品スーパーで県内シェア首位。地場の生鮮食品や健康志向の食品を重点訴求。大証2部,福岡上場。
・売 上 高:1,308億円(2012年2月末)
・店 舗 数:93店舗
・従 業 員 数 :8,282名(社員1,379名、嘱託326名、準社員4,383名、アルバイト2,194名(平成24年2月)
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いま,地方スーパーの経営が揺らいでいる。関東圏においては,栃木県の食品スーパー「ヤマグチスーパー(山口本店)」,埼玉,千葉を地盤とする中堅スー パーの「マルヤ」(東証2部)の2社が,牛丼チェーン「すき家」を展開するゼンショーホールディングス(HD)の傘下に入った。ゼンショーホールディング スは,1兆円企業を目指し,千葉県の地域スーパー「M社」の買収も視野に入れうなど,小売流通分野への参入を本格化させている。
◆関連ブログ アーカイブス
・鹿児島の食品スーパー タイヨー 「経営陣がMBO」・2
・鹿児島の食品スーパー タイヨー 「経営陣がMBO」・1
・セブン-イレブンの鹿児島進出で大苦戦のスーパー「タイヨー」・1
・コスモス薬品の快進撃止まらず!!
・九州でのセブン-イレブンの存在−<地域大手のイオン,トライアルカンパニー,コスモス薬品をしのぐ規模>